ハンディGPSでは100メートル位の誤差が出ると言われています。本当にそうなんでしょうか?
早速GPS−12で実験してみました。下の絵が結果のグラフです。(クリックすると拡大されます)
このように、ハンディGPSによる測位には大きな誤差が出るのです。試しにGPSの電源を入れて現在地をプロットする画面をしばらく眺めていると、あたかも自分がウロウロと動き回っているような表示になります。
70mという誤差は大きいように感じますが、登山などのアウトドアスポーツで使うには許容範囲であると言えます。ちなみにGPS12の製造元GARMIN社はアウトドアグッズのメーカです。
しかし、用途によっては全然使い物にならない誤差でもあります。よくカーナビゲーションで1本隣の道路を走っているように表示されるというような話を聞きますが、市街地ではありうることだと思います。
では、このような誤差はなぜ生じるのでしょうか?
1つは受信機自身が持っている機械的な誤差。部品の経年変化やバッテリーの消耗状態、アンテナの感度などの要因が考えられます。
2つ目は衛星から出た電波が受信機に到達するまでに受ける影響。電離層や大気中の水蒸気により電波のスピードが変わり、測位に誤差を与えます。
しかし、この2つはいわば「定数的」なもので、グラフのように大きなゆらぎを生じさせるものではありません。
誤差の最も原因は、SA(Selective
Availability 選択利用性)によるものなのです。
(SAの説明はこちら)
「こんなに大きな誤差が出るのでは使いものにならない」ということで考えられたのがDGPS(Differential
GPS)です。
DGPSとは2つの受信機を使い、測位した位置の差により正確な位置を求めるというものです。
前述のようにGPS測位自体の精度は1m以内(あるいはそれ以上)と非常に高精度なものです。また、電離層などの影響は近距離(100km以内)ならほぼ同じと言われています。そしてSAの影響も2つのの受信機で同じように現れるのです。
この性格を利用し、2台の受信機で測位した結果を差し引きすれば、小さな誤差で2点間の距離が計算できるのです。そして一方を経緯度の分かっている既知点、他方を求めたい点に据えて観測すれば、精度の高い測位ができるという訳です。(ただし、SAの場合は2つの受信機が同じ組の衛星を受信しているという前提条件があります。
)
例えば既知点で観測を続け、刻々と変化するGPSの経緯度からその点の経緯度を引き算すれば現在の誤差の状態が分かります。この値を何らかの手段(ラジオ電波など)で発信し、移動側で測位している経緯度に足してやれば現在地の正確な位置が求まります。現在開発が進められているのがこの手法によるもので、船舶、カーナビ等で実用化されつつあります。
では、果たして2台同時受信で正確な位置は測定できるのでしょうか?
電離層・SAの影響が等価であれば、2台の受信機で同時観測した経緯度の差は一定であるはずです。
今回幸いにもGPS−12を2台使える機会があったので、早速実験してみました。
まずは実験の模様をご覧下さい。
以上のように、2台の受信機で同時観測を行えば完全ではないにしろ、ある程度の誤差の消去ができることが分かりました。
GARMIN社ではハンディ機用にDGPS受信機(船舶用に中長波帯で発信されている誤差情報を受信してGPS受信機をコントロールするもの。日本では瀬戸内海沿岸等で受信でき、利用地域は広がる予定)を発売しています。
また、最近流行のカーナビゲーションでもFMラジオ局を基地局として、誤差情報を発信するサービスを開始していますし、国土地理院では全国に設置された電子基準点(GPS受信機を固定して常時観測するもの)で得られた誤差情報を電波で発信するという予定もあるそうです。
測量に使われるGPSでも手法は違うものの、「電離層・SAの影響が等価であれば...」の原理を利用してミリ単位での正確な測位を実現しています。
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